ぎっくり背中って?
最近「ぎっくり背中」という言葉をよく聞く。
ぎっくり腰は腰でおきるが、「ぎっくり背中」は背中でおきるそうだ。
昔から、「背部の急性痛」というのはあったが、それを「ぎっくり背中」というのは、最近出て来たものだと思う。
ぎっくり腰の原因としては、もともと硬くなっている筋肉が、急な動きを矯正されて出る。
しかし、そのとき、腰の筋肉で何がおきているのかは、まだ科学的に解明されていない。
「筋膜リリース」という言葉もよく聞くが、マッサージを「筋膜リリース」と称してメニューに取り入れている接骨院も多い。
「筋膜リリース」を正式に学んでいる方の説では、「ぎっくり背中」は背中の筋肉の筋膜が損傷して痛みを出すという。
これにしても、実際に筋膜を見て損傷しているかどうかを確認するわけではないので、あくまでも予想にすぎない。
筋膜ではなく、筋繊維かもしれないし、筋膜と筋繊維の両方かもしれない。
いずれにしても、急に強い痛みがでるということは、筋肉あるいは筋膜に炎症が起きるということだ。
そこで、施術家によっては、ぎっくり腰や「ぎっくり背中」になったら、まず冷やすことが大切だと言われる方がいる。
私の経験上、ぎっくり腰で、他の接骨院で腰を冷却する治療を行って、かえって悪くなったと言う方が多い。
痛いところを冷やすという発想は、きわめて合理的だが、実際には、温めるほうが回復が早いようである。
このへんが腰痛治療の難しいところだ。
まあ、ぎっくり腰はかなりの痛みを伴うが、それが一か月も2ケ月も続くことはない。
あるとすれば、腰の筋肉以外に問題がある場合だろう。
しかし、あの強烈な痛みは、一日でも早く消したいと思うのは当然だ。
そこで、冷やすのか、温めるのか、どっちが治りが早いのかは、施術家によって見解のわかれるところだ。
当院では、まず冷やすということはしない。
積極的に温めるということも勧めない。
日常的には腰を冷やさないように注意してもらう。
まず、その痛みが強くて我慢ができないならば、シップを貼ったり、痛み止めを飲んでもらったりする。
一般的に使われていシップは、貼ると冷たい感じがする。
これは患部を冷却するものではなく、痛みを和らげるもので、皮膚から痛み止め成分を入れるものだ。
その間に、腰の筋肉以外の筋肉のバランスを取り、腰の筋肉の負担を取り除く。
もちろん、骨格も整え、筋肉が動きやすいようにする。
それから、腰の筋繊維に直接働きかけ、筋繊維の癒着を取り除く。
こうすると、1週間くらいで激痛は収まり、2~3週間くらいで痛みが消える。
もちろん、例外はあるが、当院では、そういう患者さんが多い。
「ぎっくり背中」も同様な施術を行うことにより、同じような経過をたどる。
背部にある筋肉で大きなものは僧帽筋の中部、下部。
肩甲骨と胸椎の間にある菱形筋。
これらの損傷が考えられる。
僧帽筋の中部、と下部は糖分やカフェイン、ニコチンなどと関係し、東洋医学で言うところ脾臓と関係する。
菱形筋は、身心の疲労と関係し、東洋医学では肝臓と関係する。
いずれにしても、お酒の飲みすぎや、コーヒーの飲みすぎ、たばこの吸い過ぎなのかもしれない。
お酒、コーヒー、たばこと言えば、ストレス。
そんな連想はカンタンであろう。
欧米では、「バーン・アウト症候群」が昔から問題となっている。
「バーン・アウト」とは燃え尽きること。
つまり、「燃え尽き症候群」と訳すことができる。
サラリーマンが仕事のし過ぎで、身心ともに疲れ切ってしまい、それに伴って身心にいろいろな症状が出てくる。
サラリーマンだけではなく、本当の自分を隠し、ひたすらいい子を演じて疲れ果ててしまうという子供たち、主婦で、自分の家族のために、思いや感情を押し殺して頑張ったために、あるとき、もう何もしたくなくなるなる。場合によっては死を選ぶ人もいる。
これが「バーン・アウト症候群」だ。
そういった症状の中に背中の背部痛がある。
したがって、「ぎっくり背中」も「バーン・アウト症候群」であるか、なりつつある兆候かもしれない。
「ぎっくり背中」になったならば、最近、自分に厳しすぎてはいないだろうか?自分を犠牲にし過ぎたために、怒りを溜めていないだろうか?
もし、思い当たることがあったら、できるだけ自分の気持ちや思いを大切にし、ストレス発散を心がけてほしい。