太極拳~波の呼吸~
太極拳を稽古するときは、波の呼吸で行うことをお勧めします。
身体にいい呼吸といえば、腹式呼吸。
腹式呼吸には、順腹式呼吸と逆腹式呼吸があります。
順腹式呼吸とは、息を吸うときに丹田をふくらませ、息を吐くときに、丹田をへこませる。
一般的に腹式呼吸といえば、この順腹式呼吸のことをさします。
逆腹式呼吸とは、息を吸うときに胸をふくらませ、息を吐くときに丹田をふくらませる。
あまり世間には知らていませんが、武術で使う呼吸は逆腹式呼吸です。
では、太極拳の型を行うときは・・・・・。
どっちでもいい。
・・・・というか、こだわりすぎないようにすることです。
太極拳はゆっくりと動きます。
防御の動きの時は、息を吸い、攻撃のときは息を吐く。
これが原則としてあるわけですが、防御が連続して続くとか、防御の動きが攻撃の動きより大きかったりすると、息を吸う時間が長くなり、かなり苦しいことになります。
そのうえ、吸うときは丹田をふくらませ、吐くときは丹田をへこませて・・・・なんてやっていると身体に無駄な力が入り、逆に息苦しくなります。
では、どうすればいいか?
防御の動きでも、吸うのが苦しくなったら息を吐けばいいし、攻撃の動きで、間違って息を吸ってしまっても気にしない。
順腹式がやりにくくなったら、途中で逆腹式にすればいいし、順腹式と逆腹式が合体してもいい。
だいたいでいい。
それにしばられない。
なんとなく、おおざっぱにそれを守っているという感じ。
しかし、順腹式でやろうが、逆腹式でやろうが、丹田を意識することには変わりない。
これだけは守ってください。
あとはゆったりと、できるだけゆっくりと動くことです。
たとえ10分でもいい。
呼吸もゆったりと、丹田を意識しながら。
10分間をたっぷりと使って、贅沢に使ってゆっくりと動く。
呼吸に合わせて動く。
こうすると、気持ちがおちついてきて、冷静に物事を考えられるようになります。
もうひとつ、呼吸法の大切なコツがあります。
それが「波の呼吸」。
イメージしてみてください。
暖かな日差しの中、砂浜に立って、穏やかな波を見ている場面を。
そして、小さな波が盛り上がって、砂浜に打ち寄せ、ザーッと広がっていく様子を。
その時の波の音・・・・。
寄せては返すその音。
耳をすまして聞いていると、心が穏やかになっていきます。
これを、この風景を太極拳をやっているときに思い浮かべるのです。
太極拳の攻撃と防御の動きは波のような動きです。
防御で波が盛り上がり、攻撃で波が打ち寄せます。
この動きに呼吸と波のイメージを重ねます。
呼吸は鼻で行います。
鼻で吸って鼻で吐く。
この呼吸音、だんだん穏やかな波の音に聞こえてきます。
これが太極拳の「波の呼吸」。
たとえ10分でも、心が穏やかに落ち着いてきます。
ぽかぽかと温かい日差しの中、穏やかな波を見ながら、そのやすらかな波の音を聞きながら、ゆったりと心が落ち着いてきます。