新時代の接骨院待望論
今は接骨院の看板をおろし、整体院として開業している。
接骨院をやっていたころ、骨折、脱臼で来た患者さんはゼロだった。
外傷で来たのは、足首捻挫の患者さんだけだった。
その患者さんにしても2、3人くらいしかいなかった。
開業して7年たっても・・・である。
他の接骨院でも、整形外科が近くにない地域以外は、外傷の患者さんは少ないと思う。
しかし、接骨院では、外傷以外の患者さんは診てはならないという法律がある。
骨折、脱臼でも医師の許可がなければ、施術してはならない。
接骨院で施術をするには、柔道整復師という国家資格を取らなければならない。
そのために専門学校で3年勉強する。
専門学校の卒業試験を受けて合格しなければ、国家試験を受ける資格がない。
その3年間で、医学の基礎知識や運動学、心理学なども学ぶが、メインは柔道整復学である。
その内容は、骨折、脱臼、捻挫などの外傷を治す技術である。
接骨院で働くための知識と技術を学ぶ。
しかし、やっと資格を取り、接骨院に来てみると、骨折、脱臼、捻挫の患者さんはごく僅かしか来ない。
そういう患者さんは、皆、整形外科に行くからだ。
整形外科では、レントゲン、CT、MRIを撮影して骨がどんな状態なのか確認できる。
そこで、必要があれば手術もする。
薬も処方してくれる。
接骨院では、それらのことが一切できない。
それなら、だれが考えても接骨院ではなく整形外科に行くだろう。
整形外科がなかった時代では、骨折、脱臼、捻挫の患者さんは接骨院で治療した。
しかし、今では、仕事を全部整形外科に取り上げられた状態だ。
とても滑稽な話だ。
苦労して専門学校で3年間も学び、国家試験も受けて資格を取ったのに、職場では仕事がないのだ。
では、どうやって接骨院は経営を成り立たせているのか?
保険外治療と言うもので経営を成り立たせている。
骨折、脱臼、捻挫の患者さんは来ないが、慢性的に肩や腰や膝が痛いとか、神経痛の患者さんは来る。
しかし、そういった慢性痛の患者さんは接骨院では施術できない。
ただし、保険を使わず、実費で施術料を払っていただければ、できる。
いわゆる「自費治療」というものだ。
したがって、接骨院の経営は、保険治療と自費治療で成り立っている。
しかし、柔道整復師匠の専門学校では、慢性痛の患者さんを治す方法を教えてはくれない。
当然である。
柔道整復師としては、慢性痛を治療してはならないからだ。
しかし、整体師として、保険を使わずに自費治療をするのはOKである。
だから、最近の接骨院は、「○○接骨院」と「○○整体院」の2枚看板でやっているところが多い。
ところで、整体師は国家資格ではない。
なんの資格もなくても、始められる職業である。
ここがこの国の法律のおかしなところだ。
柔道整復師は、慢性痛の治療をしてはならないのに、何の公的な資格も持たない整体師はしてもいいのだ。
もちろん、整体師は保険治療をすることはできないが、自費治療で慢性痛を扱うことができる。
したがって、2枚看板を掲げている接骨院で働く柔道整復師は、整体師も兼ねている。
では、柔道整復師は、どのようにして整体の技術を会得しているのか?
それは様々である。
接骨院で働いているなら、そこの院長から学んだり、有名な整体師の先生に弟子入りしたり、いろいろな施術のセミナーで学んだりしている。
専門学校を出て、国家資格を取り、さらにまたその上で慢性痛の治療を学ばなければ、接骨院の現場で働くことはできないのだ。
しかし、一般的な整体師は、民間の団体や個人に短期間で技術を学び、そのまま整体院で働くことができる。
しかし、やっていることはほぼ同じだ。
両者とも、慢性痛の患者さんの治療をしているのだ。
これを考えると、柔道整復師は、高い授業料と長い時間を使って何をやっているのか疑問だ。
柔道整復師という資格と、それを養成する専門学校の仕組みが、今の時代に合っていないと考えるのは私だけだろうか?
何千時間も講義を受け、外傷の治し方を学び、現場では少ししか使わない。
だれが考えてもおかしいだろう。
今の世の中、世間が接骨院に要望しているのは、外傷よりも慢性痛に対して何とか治してほしいということだ。
本来であれば、外傷だけではなく、慢性痛に対しての治療法も専門学校で教えるべきだ。
いやいや、整形外科なら外傷も慢性痛も治療してくれるのだから、接骨院なんてもういらないんだと言う人もいる。
しかし、私は今の時代だからこそ接骨院は必要だと思う。
最近は大病院も診療所も経営が逼迫している。
だから、一日に診る患者さんの数を増やし、売り上げを上げていかなければならない。
その分、一人の患者さんに時間をかけられない。
だから、予約して行っているのに1時間も待たせられて診察は3分で終わったなどと言う人が多い。
特に慢性痛に対しては、様子見の治療で、「いかがですか?まだ痛ければ痛み止めのお薬出しておきましょう。
それではお大事になさってください」で終わってしまう。
結局、病院では痛み止めか手術かの2択で、それ以外の施術はほとんど提供してくれない。
時間がないからだ。
そこで、接骨院の出番だ。
接骨院では、病院ではしてくれないいろいろな施術をしてくれる。
患者さんの悩みや、心配事なんかも話す余裕がある。
病院ではできないことを、患者さんに納得してもらいながらやる。
一般的な整体院よりは、国家資格を持っているので信頼できる。
もちろん、レントゲンやMRIはないが、それは病院で撮ればいい。
そして、そこに異常がなくて、でも痛みがある場合は、接骨院で治療する。
これが慢性痛を治す理想的な形であろう。
医療的な知識もしっかりある接骨院が、整形外科の治療では足りない部分を補う役目を担うのだ。
そのためには、今の専門学校の授業内容を変えて、外傷にも慢性痛にも対応できる柔道整復師育成するべきだ。
何事も効率重視のこういう時代だからこそ、しっかっりと患者さんと向き合える柔道整復師と接骨院が必要なのだ。
それができなければ、柔道整復師も接骨院も時代遅れの産物となるだろう。

