日本は良い国
日本という国に生まれてきて良かったと思う。
なぜなら、自由で平和だから。
昔、中国武術の老師が日本の弟子に武術の極意が書かれている本を郵送しようとした。
送る時に中国側の検閲が入り、このような貴重な中国の伝統文化に関するものを国外に送ってはならないと言われて送り返された。
しかし、老師はあきらめず、日本から弟子を呼んで直接渡した。
「中国ではいろいろな規制があり、武術の研究も思うようにできない。日本は自由で平和な国だから、君はこの極意書でいろいろ研究してほしい」と言った。
私は、このエピソードを聞いて、自分の生涯を振り返った。
子供のころから現在まで「その考えは禁止されている」などと国からとがめられたことはない。
ある時は仏教に傾倒し、ある時は聖書を読みふけっても、逮捕されたことはない。
神などはいないと言いながら、クリスマスにケーキを買ってチキンを食べても、戒律違反として罰せられることはない。
ヒップホップに憧れ、ラッパーになりたいと思って、ニット帽子をかぶりダブダブのジーンズで「hey!yooo!」
なんて叫んでも、だれも非国民だなどと思わない。
年末年始に神社にお参りをし、クリスマスに祝杯をあげても、だれも違和感を抱かないほど、日本は自由だ。
しかし、今、私たちが生きている時代はそうでも、過去はそうではない。
隠れキリシタン、廃仏毀釈、身分制度、人権問題などなど、私達の先祖はいろんな問題と戦ってきた。
命を懸けてまでも、未来の日本のために戦ってきたのである。
私たちはいわば、その成果を甘受しているのだ。
蜜を集める苦労もせずに、その甘さを堪能している。
では、自由で平和な社会で暮らす私達に、もう不安や不満はないのだろうか?
そんなことはない。
仕事の悩み、生活の不安、政治への不満、老後の心配などで頭がいっぱいだ。
「やれやれ年は取りたくないね。嫌な世の中になったもんだ。」
ちょっと待って!
このいやな世の中、未来の日本にそのまま送り出してもいいんですか?
先祖は命を懸けて私達に自由と平和の国をのこしてくれたのに?
現代に生きる私たちは、不平不満だらけの日本を未来に伝える。
それでいいのだろうか?

