振り子打法のしくみ
どちらかというと大谷選手よりイチロー選手のほうに興味がある。
おふたりのバッティングフォ―ムには大きな違いがある。
私は、イチロー選手の「振り子打法」に大いに興味がある。
大谷選手は体が大きく、手足を目いっぱい使ってバットを振る。
それに比べるとイチロー選手のバッティングは、自分の体以外のものを使っている。
それは重力である。
あの振り子打法は、地球の重力を最大限に活用した打法だと思う。
下半身を意図的に不安定にし、その不安定さを利用してバットに重心を乗せる。
そのかわり重心のブレがない。
不安定なのに安定している。
これは下半身が後方に倒れようとするのに上半身は前に倒れる・・・・ように仕向けられているからだ。
その結果として安定する。
ひとつの体の中で二つの不安定が釣り合う。
それが浮遊した安定さを作る。
足でしっかっりと踏ん張って打つのではない。
スイングする初動で相反する重心のバランスは崩れ、この浮遊した瞬間を使ってバットコントロールをする。
全身を固めて力んで動かすのではなく、浮かせて動かすので、手がバットを細かくコントロールできる。
しかもしっかりとバットに重心が乗る。
そして打った後、すみやかに走り出すことができる。
大谷選手は打ったあと動作が止まるが、イチロー選手の場合は途切れなく走る動きに移行している。
これは、走る動きの初動で、足が地面を蹴るのではなく、上半身が倒れようとするので、自然と足が前に出ていくからだ。
投げる、打つ、走る、全ての動きがこの原則に基づいている。
からだをがちがちに固めて力を出すのではない。
水が流れるように柔らかく、しなやかにうごく。
今、メジャーリーグで多くの日本人選手が活躍するようになったが、イチロー選手のような動きをする選手を見たことがない。
イチロー選手の動きは、これからの日本人スポーツ選手にとって、世界で活躍するための重要なカギとなるだろう。
野球に限らず、スポーツ界全体でイチロー選手の動きは研究されるべきだと思う。

