「メタファー」・・・・不思議な効果
「メタファー」という言葉を聞いたことがある人は少ないと思います。
例え話とか比喩などという意味です。
メタファーを使うと弱い筋肉が強くなる。
そんなこと信じられますか?
先日、四十肩の患者さんが来院されました。
高齢の女性の方で、右の首筋から右腕にかけて痛みと痺れがあり、とても辛いということでした。
筋力検査の結果、右肩の筋肉(三角筋)と、右足を持ち上げる筋肉(大腰筋)が弱いことがわかりました。
ツボを刺激して骨盤、背骨を矯正しました。
その後、真っ直ぐ立ってもらって、両腕を挙上してもらいました。
上がりにくかった肩も上がりやすくなり、痛みも少なくなりました。
もう一度、弱かった筋肉の力をテストしました。
すると、右の三角筋の力は出ていたのですが、右の大腰筋の力が弱くなっていました。
これでは、すぐに肩が上がりにくくなり、痛みがぶり返してきます。
なぜなら、大腰筋は上半身と下半身をつなぐひものような筋肉なので、大腰筋が硬くて伸びにくければ、上半身が前かがみになってしまい、腕をあげるたびに三角筋に負担ががかかるからです。
なぜ、腕をあげるたびに大腰筋が弱くなるのか?
その答えを「メタファー」で探すことにしました。
東洋医学の五行説で説明します。
三角筋は五行説では、金に属します。
金の感情は「自己否定」、あるいは「私が悪い」という思い癖です。
大腰筋は、五行説の水に属します。
水の感情は「恐れ・不安」です。
金属が冷えると水滴ができます。
すなわち金は水を生みます。
この場合、右三角筋の力が弱い。
すなわち、金のエネルギーが少ないので、水にエネルギーがまわりません。
なぜ金のエネルギーが少ないのか?
火のエネルギーが強すぎるからだと考えます。
火は金属を溶かすからです。
火は、愛情や情熱を表します。
この患者さんは、何かに夢中になりやすい傾向があります。
お仕事も楽しいし、趣味の畑仕事も楽しい。
「ついつい夢中になってしまう。だからダメなんです」とおっしゃってました。
いかにも火のエネルギーが強い感じです。
次に「メタファー」の施術を説明しました。
もちろん、例え話の質問で筋肉が強くなるなんて信じてはもらえませんでした。
何か胡散臭いと思われたかもしれません。
「まあ、物は試しですから、やってみましょう。失敗しても私が恥をかくだけですから」などと言い訳のような説明をして施術を行いました。
まず右大腰筋と左大腰筋の筋力テストをして、明らかに右が弱いことを確認します。
次に「メタファー」の質問をします。
この「メタファー」の内容は筋肉によって違うものが用意されています。
大腰筋の「メタファー」は全部で5つあります。
それぞれの「メタファー」の質問に自由に答えてもらって、大腰筋のテストをして強くなっていれば、その「メタファー」の内容に関することが、大腰筋の力を維持するためのヒントになります。
では、最初の質問です。
「あなたは蹴る動きから、文字通りあるいは比喩的に、何を連想しますか?」
その患者さんは、こう答えました。
「何か土や草を蹴るようなイメージが浮かんできます。」
この答えは非常に個性的でユニークな答えだと思いました。
だいたい男性の場合ばあいは、サッカーとかボールを蹴るイメージを思いつく人が多い。
女性の場合、旦那さんを蹴るとか、いやなことを蹴とばすといったイメージが出てきます。
しかし、この患者さんの場合は「土や草」というワードが出てきました。
これは彼女の方趣味の畑に関することだと思います。
次に右大腰筋の筋力をテストしました。
しっかりと強くなっていました。
これには、患者さんもびっくりしました。
「え?なんで?????」
なんと最初の質問で効果がでてしまいました。
あとの残り4つの質問は不要になりました。
そこで、この結果について説明しました。
私「三角筋が弱いということは、いつも自分が悪いとか、自分のせいだとか思っていませんか?」
患者さん「いえ、私は人のせいにもしないし、やたらに自分が悪いとは思いません。」
私「お話を伺っていると、ついつい夢中になりすぎるから悪い、痛みが出るといった言葉が出てきますよね。」
患者さん「あ、そうか。知らないうちに自分が悪いと思っていました。」
私「今度から、夢中になることは悪くないと思ってみたらいいかもしれません。実際に仕事が楽しいなんて幸せなことだし、夢中になれる趣味があることも幸せなことだと思います。」
患者さん「そうですね。」
私「メタファーで土や草という言葉が出てきたのは、畑仕事という意味だと思います。好きな趣味を蹴るというのは、夢中になりすぎないで適度に畑仕事にけりをつける、つけなければならないと思っているのだと思います。それは、好きなことに夢中になりすぎると痛みが出るという不安があるからです。その不安が右大腰筋の硬さを生み、力をを弱くするので、右側の上半身が前傾します。その状態で肩を動かすと右三角筋に負担が出て痛みが出ます。ついつい夢中ににってしまった、また肩が痛くなると思えば、不安になってまえかがみになります。それで肩を動かせば、痛い。やっぱり夢中になりすぎるから痛くなった、自分が悪い、という負のスパイラルが続きます。なので、夢中で仕事をしたり、趣味に没頭したあとは、後悔するのではなく、スッキリしたぁ!とか頑張ったなぁとか、幸せだなあと思ってください。そうすると大腰筋の力みが消えて上半身がおきやすくなります。」
患者さん「わかりました。自分のせいにはしないで、楽しむことにします。」
患者さんの表情も明るくなり、スッキリッとした姿勢になりました。
あらためて「メタファー」の不思議さを実感しました。