たったこれだけ30秒!あれだけ辛かった痛みが嘘のよう!
世の中には治療法がたくさんある。
どんどん新しい治療方法も開発され、それを学びたい治療家は大勢いる。
一般的にそれを教えるセミナーの受講料は高い。
一回の受講料で10万円なんていうのもめづらしくない。
まあ、それを学んで、多くの患者さんを治して、ゴッドハンドになれれば安いものかもしれない。
私のスマホにも多くの治療法の広告が入ってくる。
「たったこれだけ。30秒!あなたも今日からゴッドハンド!」「これだけで難病も治った!」
魅力的な言葉が並んでいる。
四十肩の患者さんの声「今までいろいろ探して、ゴッドハンドといわれる先生にも診てもらったが、全然なおらなかった。でもこの施術を受けたら嘘みたいに治ったんですよ。本当にありがとうございました。」
思わず、セミナーに申し込んで、その技術を習得したいと思った。
その前にサービスで施術の様子を映した動画を見ることができた。
先程「ほかの先生に診てもらったが治らなかった」と言った患者さんが施術を受けている。
確かに施術前は肩が痛くて腕が少ししか上がらなかったのに、たった30秒の施術で上まで楽々とあがった。
「すごい!」と思いつつ、何か違和感を覚えた。
この患者さんの顔、どこか見たことがある。
そうか、べつの治療方法のセミナー動画にも出ていた人だ。
その治療法のうたいもんくは、「これ以上ない究極の治療法!」といったようなものだった。
ということは、この患者さんは、結局、「究極の治療法」でも治らず、「たったこれだけ30秒」のほうで治ったということか・・・・・。
いや、しかし、「究極の治療法」のほうでも腕は上がっていた思う。
そうでなければ、PR動画にはならないからだ。
何か見てはならないものを見たようだ。
それはともかくとして、私はこう思う。
世の中に治療法はたくさんあっても、全ての人に効果がある治療法などない。
「究極の治療法」で治っても、「たったこれだけ30秒」では治らない場合もある。
同じ治療法でも、治る人と治らない人がいる。
治る時期もあるし、治らない時期もある。
患者さんの置かれた環境、心理状態によって、前回の治療では痛みが少なくなったが、今回の治療で前より痛くなったなんてこともある。
それだけ、人間というものは複雑な存在であり、数学の公式を当てはめるようにしても、問題は解決しない。
患者さんの話を聞きだしながら、その人が抱えている問題を浮き彫りにする。
その人が抱えている闇を眺めるようにながら、治療方法を選び、組み立てていく。
結果的に、同じ治療法をくりかえすこともあるし、別の治療法と組み合わせることもある。
途中からまったく別の治療法に切り替えることもある。
その見極めや判断は怠ってはならないと思う。
「たったこれだけ!」「究極の」なんていう言葉にのせられて、患者さんを見ないで作業をくりかえす。
そういう治療家にはなりたくないと思っている。