脳の老化は年配者の特権だ。
子供のころ、音楽番組を見ていると父がこう言った。
「最近のアイドルなんて、みんな同じようで、だれがだれやらよくわからんな。」
その時は、大人なんてそんなものかと思っただけだった。
しかし、最近、歌番組を見てこう思った。
みんな同じような顔して、だれがだれだかよくわからない。
ほとんどの歌手はグループ化している。
昔、ジャニーズのアイドルグループが出てきて大勢で歌やダンスをしても、なんの違和感もなかった。
ジャニーズ事務所というのは、こういうスタイルで売り出していくんだなと思っていた。
しかし、EXILあたりから、何かがおかしいと感じ始めた。
歌を歌わないでダンスに専念している人たちが多すぎる。
やがておニャン子クラブ、AKB48となると、なんだこの人数は!と違和感を感じ始めた。
それでも、秋元さんと言う人は時代の先端をいく人だから、これも売れるためのひとつのスタイルなのかなと思った。
やがて、韓国でグループ歌手たちが多く出てきて、世界的にも活躍する人たちが出てきた。
すると日本人もそれに参加して日韓混合グループで活動していった。
なるほど、世界で人気があるのはダンスパフォーマーがたくさんいるグループなんだなと認識した。
しかし、である。
去年の紅白歌合戦を見て、愕然とした。
出演歌手のほとんどがグループ歌手で、今はやりのKポップスタイルではないか!
そのメンバーの誰を見ても、Kポップ歌手にしか見えない。
みんな同じような顔だ。
韓国人なのか日本人なのかわからない。
今の若い人たちは、これがあたりまえで、人数が多い中で自分の「推し」を探し出す。
人数が多いから、自分のお気に入りは必ずいる。
飽きれば、他の人に乗り換える。
人数が多いので、乗り換え放題だ。
しかし、それは若いからできるのであって、歳をとるとできない。
いや、いい歳をして、アイドルもJポップもないだろうと言われるかもしれないが、そういうことは抜きにしても、どの顔も同じように見えるんだから、「推し」を見つけることなどできない。
若い人達にはよりどりみどりでも、年配者から見れば十羽ひとからげなのだ。
歳をとると名前を憶えることが苦手になる。
顔は知っているが名前が出てこないということがよくある。
だから、アイドルグループの名前もメンバーの名前も憶えようとする気がおきない。
脳は年齢とともに細かな違いを記憶するのが苦手になってくる。
だから、どれも同じような顔に見えるのだろう。
しかし、細かなことは苦手だが、おおざっぱにくくるのは得意になる。
雑多にみえるものの共通点を探し出し分類する。
歳とともに、オリジナリティーあふれる分類の仕方をする人もいる。
若い人は、大勢の中で自分のこだわりや細かな事を探し出し、興味の対象を絞っていくが、おおわくでの分類は好まないし、したいと思わないだろう。
同じように見えるけど、このグループの彼のこのしぐさが好きとか、テレビのときとコンサートのときのダンスの動きが違うとか、どんどん細かいところにこだわりを見せていく。
年配者は、どんどん分類していって、今なんで歌手のグループ化が進んでいるのか?プロデューサーの意図は何か?事務所の方針、芸能界に何がおきてるのか?韓国と日本人の友好関係とか、世界情勢とか、どんどん枠を広げて考えていく。
どっちが冷静に物事を見ているかというと、やはり年配者のほうだ。
若い人たちが夢中になっているとき、その立っている場所がどこにむかってくのか?
これを見抜いてアドバイスできるのは、年齢を重ねた脳を持つ我々の特権だ。
歳をとったというだけで、邪魔者扱いされて肩身が狭い。
そんなことを言っている場合ではない。
けむたがられようが、おせっかいと言われようが、若いもんにいくらでも小言を言えばいい。
彼らよりも、年配者のほうが高いところから世間を見渡しているのだから・・・。