【公式】いしづき接骨院|新潟県見附市の接骨院

見附初!腰痛の痛みを解消するための接骨院『いしづき接骨院』

【営業時間】
月曜日~土曜日
午前|8時30分~12時30分
午後|14時30分~18時30分
【休業日】
日曜・祝日

努力ではたどり着けない場所がある。

感性というものは、自分ではどうにもならない。

サラリーマン時代、思い知らされた。

私は婦人セーターの卸売り会社の営業マンをしていた。

あらかじめ売れそうなものをメーカーさんに発注して、それを主に東京や大阪、名古屋などに卸していた。

これを「見込み発注」という。

それとは別に、客先からこれを作ってくれと依頼を受けて、メーカーさんに発注するときもある。

これを「バイ・オーダー」という。

お客さんによっては、かなり細かく指定してきて、色などもかなりのこだわりを持っている。

私の名古屋の顧客で、小人数で営業されている会社があった。

そこの社長は若くして亡くなり、奥さんが社長となり、息子さんが専務となっている。

息子さんが仕入れをするのだが、かなりの激しい気性で、いつも従業員を怒鳴り散らしていた。

もちろん、取引先にもかなり厳しいことを言っていた。

私は歳が近かったせいか、他の仕入先よりも少し優しかった。

彼はほとんど「バイ・オーダー」で発注をくれた。

しかし、である。

物凄く細部にこだわる。

その指示を正確にクリアしなければ、オーダーしない。

何回もサンプルを作らせ、結局上手くいかないと、「なにを寝ぼけたことやってんの?おれは眠たいことやってるやつに時間を割くつもりはない!」と癇癪を起す。

サンプルは作ったが、没になることも多かった。

いつも4~5点、サンプル依頼がくる。

そのうちの4点はOKが出たので、生産に入る。

しかし、残りの1点が気に入らないと、生産途中の4点もキャンセルする。

彼曰く「そんなもん、あたりまえだろ!こっちはグループで売ってるんだから、1点無ければグループにならん。何を寝ぼけたこといっとるの?」。

たちまち私は窮地に陥った。

しかし・・・・である。

彼の出してくるデザイン、色、どれをとっても素晴らしい。

たしかに細部にわたってこだわるが、そのとおりのものが出来上がるといいものができあがる。

見ただけで、これは売れるとわかる。

商品は、値段が安くて物が良ければ売れる。

高級な素材を使ってもデザイン、色、仕様などが悪ければ、どんなに安くしても売れない。

ところが、安い素材でもデザインが良くて、値段も高すぎず安過ぎない。

これが売れる。

専務の出すデザインは、これをいつもクリアーしてくる。

なんで、こんなにいいデザイン、カラーを出してくるのか?

もちろん、彼はゼロから発想しているわけではない。

小売店をまわって、売れている商品をサンプルとして購入して、それを土台にデザインを考える。

しかし、そのサンプルを選ぶセンスが抜群に優れている。

このセンス、感性は、多くの売れ筋商品を見ていると、だんだん流行の流れがつかめてきて、ある程度磨かれていくものだ。

しかし、あくまでもある程度だ。

どんなに努力しても追いつかない領域がある。

それは生まれ育った環境のせいもあるだろうし、生まれ持った才能かもしれない。

その専務の才能が中心になって会社の売り上げが成り立っている。

専務がいなくなれば、仕事ができなくなれば、その会社は成り立っていかない。

デザイナーもいたが、デザインはさせずに、指示書(服のサイズを細かく指示したもの)を書かせるだけ。

例え提案したとしても、ぼろくそに言われて却下される。

しかし、それも納得できる。

彼はデザイナーよりももっと売れるデザインを考案するからだ。

いいデザインと売れるデザインは違う。

流行と実用の折り合いのつけかたが絶妙でないと、売れない。

この感覚、感性、こればかりは、努力して勉強しても行きつかないゾーンがある。

当時うらやましくてしかたがなかった。

彼の短所は気が短くて、すぐに癇癪を起すことだ。

まわりが付いて行かない。

しかし、よく付き合ってみると努力する者に対して優しいことがわかる。

その努力の程度がいい加減だと、逆鱗に触れる。

基本的には優しい人なのだと思う。

あれから20年近くたつか。

パワハラ、モラハラのこの時代、専務はいまだに癇癪をおこしながら仕事をしているだろうか?

時代が、彼の才能をつぶしていなければいいが・・・・。