お散歩日記 R7/1/20
午前6時20分起床。
着替えて車の雪おろしを捶るために外へ。
空は曇り。
駐車場のコンクリートは乾いている。
気温1℃
車のところに行く間に、左足が滑る。
しまった!
乾いているところばかりではなかった。
たしかに少し雪が残っていてその際が凍っていたのだ。
滑った瞬間に、股関節のロックをはずす。
こうすると足だけ滑っても腰から上は崩れない。
股関節がロックされていると、完全に転ぶ。
長年、武術をやってきたおかげで、反射的にこのシステムが作動する。
しかし、あまりうれしくはない。
もっと足の裏に神経を集中させていれば滑ることはなかった。
眼で見ただけで乾いていると判断し、雪のそばの氷に気が付かなかった。
車は氷っているが、雪は積もっていない。
エンジンをかけて、家に戻る。
歯磨き洗顔、トイレを済ませる。
例によって素粒水を水筒に詰め込む。
ヤクルトを丹念に振ってからぐびっと飲み干す。
今日は、ほとんど底に残っていない。
少しニンマリして達成感をかみしめる。
さあ、今日も市民の森へ出発!
夜中に雪は降らなかったようで、路面が乾いている。
しかし、1℃という気温は、きのうの雪解け水を氷に変えて、そこここに罠をしかけている。
気を緩めてはならない。
駐車場に到着。
茶色いバンが停まっていて、そばに何か長方形のブロックのようなもの一個立たせて、その上に腰かけている。
何をしているのか、よく見てみると、なにやらスノーシューズのようなスニーカーのようなものを履こうとしている。
頭には何もかぶっておらず、黒髪を七三に分けている。
年齢は30代半ばくらいか。
眼鏡はかけているように見える。
薄暗いので、見えにくい。
中肉中背だが、少し太り気味なのいかもしれない。
しかし、明らかに登山者の服装ではない。
何か、電気工事関係の作業員のような服装だ。
車の荷台には、色々な工具箱のようなものが見える。
私は彼を横目で見ながら、学習棟への登り口へと進む。
ところどころ氷っている部分があり、用心しながら登り口に進む。
登り始めから、道の無いところにかんじきのあとが並んでいる。
いつもは、道なりに添うようにあとがついているが、今日の跡は、妙に浮かれたようにあちこちに並んでいる。
昨日はお天気が良かったので、少しはしゃいだのかも知れない。
長方形のかんじきだけでなく、丸いかんじきも一緒にはしゃいだようだ。
ほほえましい夫婦の光景が目に浮かぶ。
お気に入りの額縁の風景のところにたどり着く。
そこで、私は見たくないものを見てしまった。
なんと駐車所にいたあの男。
雪の壁に向かって変な姿勢で立っている。
背中を丸め、両手はあきらかに下腹のどこかを支えている。
骨盤は後傾し、顔は下腹部に向いている。
この態勢は、まさに立ち○○の図。
もちろん遠くから見ているので、はっきりとそうとは言い難いが、私は、ほぼ間違いないと思う。
少しお尻を縦にふって、どうやらチャックをあげたらしい。
そうして、私のいる山に向きなおって、仁王立ちになった。
腰に手をあて、スーパーマンのようなたたずまいだ。
私の視線を感じて振り向いたのか、それともすっきりしたついでに山を眺めたのか?
それはさだかではない。
せっかく、かんじき夫婦の仲睦まじい様子を想像し、ほっこりしていたのに、奴の立ち○○の姿を見て一気に嫌な気分になった。
学習棟への道を急いだ。
嫌な気分を振り切るように歩を進めた。
学習棟に到着。
さて、ここから先はもっと急な坂道だ。
おもむろに見上げると、踏み固めた小道のわきを縦横無尽にかんじきのあとがついている。
ああきらかに丸いかんじきが浮かれて歩いているのがわかる。
奥様はだいぶかんじきに慣れて、楽しんでいるようだ。
私はひたすらまっすぐな小道を登る。
かつて私がぬがった足跡が、はずかしいくらい丁寧に残っている。
まるでなんとか遺跡が発掘されて、その住居跡が大切に保存されているかのようだ。
城見台に到着。
切り株の上に立つ。
東の空に向けて合掌。
「きょうもありがとうございます。」
今日は少し明るい曇り空。
雨や雪は降りそうもない。
山々は、はげかけた頭のように雪におおわれた地肌を見せている。
木々はまばらになった毛髪に似ている。
視線を市街地に向ける。
今日は心なしか車のライトや街灯の灯りがまたたいているように見える。
低い山の稜線の上には群青色の雲。
この雲があるときは、雪かあられが降ってくる可能性がある。
しかし、いつも吹いている西風が吹いていない。
こちらに向かってはこない気がする。
学習棟に戻る。
真っ先にトイレの入り口に向かう。
ガラッ。
今日も開いている。
真心を込めて直角にお辞儀をする。
「今日もありがとうございます。」
さあ、太極拳99勢を始めよう。
起勢。
丹田にボールが現れる。
首を伸ばせ。
心がつぶやく。
攬雀尾。
早くも床から春の陽気が吹きあがってくる。
その風を下の前歯まで感じる。
単鞭。
湧泉に心地よい感覚。
左右搬攔。
指の骨一本一本に背中から流れてくる気がからみつく。
分脚。
また心がつぶやく。
「首を伸ばせ。」
虚嶺頂勁。
気が真っ直ぐに体を突き抜ける。
野馬分鬃。
いくつもの経穴に意識を置くと、体が浮いてくるのを感じる。
いつもそうとは限らない。
ひとつにこだわれば、逆に肩や背中が凝ってくる。
そうなったら、その意識をやめる。
やめても意識を集めた形跡は体に残り、無理ない匙加減で意識の底に沈んでいく。
このくりかえしで、体内に武術のシステムが構築されていく。
太極拳は、体に関する要求が数多くある。
意識は動きの中で、それらを守りながら保持しなければならない。
しかし、それを忠実に行えば、体が緊張してスムーズに動けない。
そういう時は一旦あきらめる。
好きなように、好きな姿勢で動いていいと、自分の許可を出す。
しかし、意識した形跡は消えない。
やがて、自然と意識し過ぎた所にちょうど良い気が集まってくる。
だから、意識してはやめ、また意識してはやめていく。
この繰り返しで身体はいくつもの要求を満たしながら、同時に展開していく。
いくつもの意識が同時に働いて体を動かすことができると、自分の体の重さを感じなくなる。
これは経験上、言えることだ。
最終的には羽毛のような軽さになるのだと思う。
7時30分終了。
今日も少し時間がたつのが早かった。
学習棟の正面に立ち、礼。
「今日もありがとうございました。」
駐車場まで降りる。
まだ、奴の茶色いバンがある。
○○小僧め。
姿が見えない。
デスゾーンに臨む。
今日は氷の帯が、かなり広い幅で私を待ち受けている。
エンマ大王降臨!
へたをすれば、命が危ない。
除雪された雪の壁のきわに私の長靴の小指側のエッジを当てながら歩く。
小さな小さな歩幅で、ゆっくり歩く。
無事にわたり切った。
道路に出る。
路面は乾いている。
道路わきには、私の大腿部の中下3分の1くらいの高さの雪の壁が並ぶ。
私はその上にふわりと乗る。
実は昨日、これができることを知ったのだ。
昨日の気温は-3℃。
冬晴れのよいお天気だった。
私が貯水池のほうから道路を歩いて帰ってくると、奇妙な光景を目にした。
なんと、人が雪の壁の上を歩いている。
ぬがることもなく、軽々と歩を進めている。
そうか今日は気温が低いので、「しみわたり」ができるのか!
その男性は40代後半くらい。
身長は175センチ、体重85キロ・・・・といったところか。
堂々たる偉丈夫だと言っていいだろう。
それが軽々と雪の上を歩いている。
彼には散歩をしていると時々出くわす。
いつもシベリアンハスキーの大型犬をつれて散歩をしている。
その時は、犬が雪の上を歩き、彼は道路を歩いている。
なんと、今日はその逆で、彼が雪の上を歩き、犬が道路を歩いている。
彼はこの近所の住人だ。
今日が「しみわたり」ができると経験上わかっていたのだ。
私も子供のころ、田んぼの上を「しみわたり」したことがあるが、雪の壁の上を「しみわたり」するという発想がなかった。
恐るべし!
地元のひと。
彼が私の目の前で雪壁から降り、すれ違ったあとに、私も雪の壁の上に乗ってみた。
出来る!
沈まない!
自分の視線が上がり、風景が違って見えた。
壮観だ!
そして、なお素晴らしかったのは、雪の上に小さな銀色の光が見えた。
そこここに銀ラメのように散らばって光っている。
雪の表面の氷の粒子が日の光を浴びて発光しているのだろうか?
-3℃の世界は美しい。
今日は、-1℃。
大丈夫だろうかと不安はあったがやってみた。
大丈夫。
ぬがらない。
少し沈む感じは否めないが、上出来だ。
雪壁の上を歩いて、貯水池まで行って、意気揚々とデスゾーンまで戻ってきた。
デスゾーンの両脇には雪が積んであるが、壁になってはいない。
ここは氷の上を歩くしかない。
今までの歩き方とは打って変わって、びくびくしながら歩いた。
やっとデスゾーンを抜けた。
駐車場を見渡す。
しょう・・・じゃなかった、○○小僧のバンはまだ停まっていた。
本人はいない。
しかし、車の近くの雪の上にボストンバックとスニーカーらしきものが置いてある。
なぞだ。
せっかくいい気分でお散歩を終えたので、彼のことを考えるのはやめにした。
自分の車に乗り込み、FMーNIIGATAをつける。
軽快な女性パーソナリティーの声を聞きながら接骨院へ向かった。
えっと、ここで皆様にお断りしておきたいことがある。
私のお散歩にはいろいろなことが起き、それを日記に書くと大量の文字数になる。
正直、毎日これを続けるのは大変だ。
これからは、時間に余裕あるときだけ書くか、もっと簡単に短く書くか、いずれかにしたい。
ご了承願いたい。