お散歩日記 R7/1/18
朝6時起床。
着替えて外へ出る。
雪は降っていない。
車は、うっすら雪の粒が覆ってい入る。
意外と今日はいつもより明るい。
曇り空ではあるが、色が薄い。
雲の切れ間から茫洋とした月が見える。
半月よりも丸く、満月よりも半分近く欠けている。
家に戻って歯磨き、洗面、トイレを済まし、素粒水を水筒に詰め込む。
ヤクルトを振る。
できるだけあらゆる角度で・・・・。
一気に飲み干す。
容器の底を見る。
やはり少し残っている。
完璧にはいかない。
気を取りなおして出発!
路面にはあまり雪は積もっていない。
スムーズに車を走らせる。
市民の森駐車場に到着。
誰もいない。
アスファルトには、大粒の白砂糖がばらまかれている。
やはりそらがいつもより明るい。
月がぼんやりと私を見下ろしている。
さあ、学習棟に向けて登ろう。
登り口に足を置く。
つるっ!
ヤバい、氷っている。
登り口は、傾斜が強いので、雪解け水が集まってきて氷るのだ。
そこを過ぎてしまえば、雪が厚く積もっていて滑らない。
特に今日は踏み固められている雪は堅くて、安定感がある。
特に最近、この安定感が増している。
その上に白砂糖の滑り止めが撒かれているので、さらに滑りにくい。
少し登ると、例の額縁付の絵。
きのうは不愛想な風景だったが、今日は少し明るいので、竹林の緑が彩を添えてくれている。
なかなかいい。
さらに登る。
学習棟の前に到着。
さすがにこの建物に用がある人は少ない。
この踏み固められた小道から学習棟に向かう足跡は、私とおそらく管理人様の足跡だけがついている。
さらに登る。
雪はかなり硬くなっている。
私のズボズボにかった足跡が凍って正確に残っている。
それを見ると、わたしの無様に歩く様子が目に浮かぶようだ。
今日も四角いかんじきの跡はしっかりと残っている。
すこし脱線して横道にそれたりなんかして・・・・・。
わりとちゃめっけがある人だ。
また少し登っていくと、丸いかんじきのあとが、横に点々と現れた。
ということは、四角いかんじきの人は、だれかと二人で来ていたのか。
しばらく丸いかんじきのあとは、雪上に浮かびながら進んでいく。
そして、消える。
少し先に行くと、四角いかんじきの跡が私の左手に浮かび、先まで少し進んで、またもとの道に戻っている。
かんじきの跡をよく見ると、金平糖が敷き詰められている。
今朝の雪は、白砂糖だ。
思い返してみれば、昨日の雪は金平糖だった気がする。
ということは、これは昨日の日中につけられたあとだ。
そして、これは2人連れなのか、それとも単独犯の犯行か?
いやいや、なんで推理なんかしているんだろう。
思いたいように思えばいいじゃないか。
私の妄想では、これは夫婦で登ってきたあとだ。
丸いかんじきはこの辺まで奥さんが手で持ってきたものだろう。
だんなさんは、四角いかんじきを掃いて、道を固めながら歩いている。
奥さんはその後ろから歩いてついてくる。
旦那さん「お~い、そろそろその丸いやつ履いてみたらどうだ?」
奥さん「なんか怖い。」
旦那さん「せっかく持って来たのに、いっけ履いてみれて。」
奥さん「わかった~。」
旦那さん「ぜってぇかんじきらとぬがることねぇすけ、横の踏んでねぇとこ歩いてみれさ。」
奥さん「あ、けっこういけるかも。楽しい~。」
旦那さん「そらろ~。」
奥さん「やっぱ、怖くなってきた。おりるわ。」
旦那さん「な~んだ。じゃ、意味ねぇじゃん。」
奥さん「怖いものは怖い。仕方ないでしょ!」
二人は山の奥に消えていくのであった。
妄想しているうちに城見台に到着。
雪が溶けて切り株もすこし頭をのぞかせている。
その上に立ち、東の空に合掌。
「今日もありがとうございます。」
北に目を向ける。
昨日は不愛想な山々だったが、今日は木々の色が茶色に見えて、少し表情が豊かになっている。
西に目を向ける。
市街地もはっきり見える。
開けた空には雪雲もあるが、うろこ雲もある。
なんと青空も広がっている。
こんな広い面積の青空、一か月ぶりくらいだろうか。
とても気分が明るくなった。
街灯も車のライトも、今日は数多く見える。
この明るさは、なんだかなつかしい。
茫洋とした月が、冷めた目で私を見下ろしている。
ささ、学習棟に戻ろう。
それにしても、ズボズボぬがった私の足跡、石膏で固めて風化しないよう加工されたように、いやというほど見せつけられている。
学習棟に到着。
まっすぐにトイレの戸が開くのを確認して、直角に礼。
「今日もありがとうございます!」
いつもより風景が明るい。
心も明るくなってきた。
ア、ア、ア~。
ア、ア、ア~。
カラスの発声練習が始まった。
さあ、私も太極拳99勢を始めよう。
起勢。
両手をあげると丹田にボールが現れる。
攬雀尾。
指先がムズムズしてくる。
合谷と湧泉を意識せよ。
心がそうつぶやく。
合谷は、親指中節骨とと人差し指の中節骨の間にある。
湧泉は、足裏で、母指球と人差し指の間にある。
つまり手足にあるツボ4つを同時に意識にのぼらせながら動けということだ。
単鞭。
丹田から両腕にエネルギーが昇ってくる。
提手上勢。
頭頂部とひさしの天井がつながる。
十字手。
春の陽気が床から吹きあがってくる。
わくわくするような高揚感。
抱虎帰山。
背中から両腕の中にエネルギーが満ちてくる。
い、いかん!
合谷と湧泉の意識が無くなっている。
斜飛勢。
体の重さが消える。
そのかわりわくわく感が消える。
それでも合谷、湧泉に意識を置き続ける。
野馬分鬃。
肩が凝ってきた。
頬に堅さ感じる。
意識し過ぎだ。
合谷、湧泉の意識を消す。
これ以上こだわると堅さが全身に及ぶ。
馬歩攬雀尾。
ワクワク感が戻ってきた。
春の陽気が体を吹上げ、浮かせてくる。
収式。
今日も太極拳99勢をやりきった。
まだ1月の半ばだが、もう土の中では、春の準備がはじまっている。
その活気が私の体を浮かべている。
青空がだんだん広がってきた。
陽光がさしてきた。
月の姿がまだ見えている。
学習棟の正面に立ち、礼。
「今日もありがとうございました。」
駐車場まで降りていく。
少しおりると駐車場が見えてくる。
そこには黒いライトバンが停まっていた。
エンジンのガーっという音が時々聞こえる。
所轄の彼だ。
ここのところ姿を現さなかったのは、別の事件を追っていたのか?
歩き固められた雪道を軽快に歩く。
駐車場の降り口にたどりつく。
足をおろして、駐車場のアスファルトの上に足をおろす瞬間が一番危ない。
アスファルトが凍っていて滑るからだ。
慎重に足をおろす。
それでも足の下がつるつるになっているのを感じる。
なんとかへっぴり腰になりながら、駐車場に降り立つ。
黒いライトバンからは、エンジン音の他にラジオの声が小さく聞こえている。
「お仕事、ご苦労様です。」
心でつぶやいてデスゾーンへ進む。
右に傾くS字カーブ。
路面には白い砂糖がばらまかれている。
砂糖のないところは、薄く白い氷がまだらにはっている。
ちょうど、子供のころ、鼻水を袖で拭ってカピカピになってテカっている・・・・あんな感じだ。
あのカピカピが何かしらの規則性を以って路面に並んでいる。
そこを踏めばアウト!
ひっくり返って頭から落ちる。
今日はエンマ大王、お出ましのようだ。
カピカピを踏まないよう、路肩に溜まった白い砂糖の上を用心深く歩く。
広い道路に出た。
道路はきれいに除雪されている。
しかし、デスゾーンと同じく、カピカピも並んでいる。
道路の端には白砂糖。
それを丁寧に踏んで歩く。
空にはうろこ雲。
青空が顔を出している。
北の方を見ると黒い雲が横たわり、その雲から0.5ミリのシャーペンの芯の頭くらいの細かな点々が降り注いでいる。
あそこでは、あられが激しく降っているのだろう。
ふいに白いライトバンが私を追い越した。
男性が前のめりになりながら運転していた。
あれは、確かうちっぱなし場の社長か。
何を急いでいるんだろう。
まもなく、また戻ってきた。
何かを確認して戻ってきたのだろうか?
しばらくすると別の白いライトバンが私を追い越した。
何やら騒々しい。
そのライトバンもすぐに戻ってきた。
運転席には小太りに眼鏡をかけた男性。
50歳くらいだろうか。
助手席には太った30代くらいの男性。
頬がつやつやして日焼けしている。
何やら事件の予感がする。
打ちっぱなし場が近づいてきた。
私は驚き、目を見張った。
なんと昨日まで社長の車の轍しかついていなかった道路が、広々と除雪してあるではないか!
それだけではない。
その除雪は貯水池を通り越して、大平森林公園の入り口まで続いているではないか!
壮観だ!
私の想像ではこうだ。
打ちっぱなし場の社長は、自分の所まで除雪車が来ないのはおかしいと思っていた。
我慢が出来ず、見附市の土木建設課に電話をかけた。
社長「おかしいんじゃないの?大平森林公園は市の管轄でしょ?除雪をするならその入り口まで除雪するのが当然じゃないか!なんで私んとこの手前で帰るんだ!」
土木建築課S君「す、すみません、課長に変わります!」
T課長「すみませんでした。早速あしたから除雪車をそちらまで入れます。」
社長「頼むよ、まったく!」
ガチャン!
それで社長は朝一番で車を飛ばして確認しに来た。
除雪されているのを確認してすぐ帰っていった。
そのあとS君とT課長が現場を確認しに来た。
除雪の具合を確認して帰って行った。
多分、そんなストーリーだろう。
広々とした道路を歩いて、楽々と貯水池の正面に立つ。
池の表面に張った氷が少し溶け始めている。
その上を小さな鳥がヨチヨチ歩いている。
白黒の配色で、この辺ではよく見る小鳥だ。
名前はいちいち調べない。
以前もこのへんにある植物の名前が知りたいと思い、図鑑などを見て勉強したが、歩きながらいちいち確認したり探したりしするのがわずらわしくなった。
純粋に散歩が楽しめなくなったのだ。
だから、もうこの辺に生息している動植物の名前を調べるにはやめにした。
駐車場に向かってなだらかな坂を歩き出す。
黒のRV車がこちらにやってきた。
例の白髪で長髪の先輩が乗っている。
少しすると赤い軽乗用車が向かってくる。
90歳大先輩の車だ。
だんだんメンバーが集まって来てつわものどもの山のぼりが始まる。
青空をながめながら駐車場に戻った。
まだ、黒いライトバンが停まっている。
「ご苦労様です。」
心のなかでつぶやいて愛車のN-WGNに乗り込む。
エンジンをかけ、ラジオをつける。
FMーNIIGTA、今日のMCは、島村ジンさん。
福山雅治似の渋い声を聞きながら、接骨院に向かう。
今日もいいお散歩ができた。