慢性腰痛と不安・恐れの関係
いつまでも消えない腰の痛みの原因は、不安や恐れから来ている。
全てがそういうわけではないが、原因のよくわからない痛みは、その可能性が大きいと思う。
原始の時代から人は不安恐れがあるがゆえに、その対策を考え、いろいろな発明が生まれ、文明を発達させて現在に至っている。
不安や恐れは人類にとって欠かすことのできない感情である。
原始時代に比べて、江戸時代に比べて、戦時中、戦後に比べて、現代はくらべものにならないくらい安全だ。
少なくても日本においては・・・。
したがって、人は必要以上に不安や恐れを感じなくても良くなった。
しかし、あいかわらず不安や恐れは私たちの身心を支配し、悩ませる。
原始からの感情は消えてなくならず、主役として君臨している。
森の中を歩いてみればわかるが、知らず知らずのうちに神経がはりつめてくるのを感じると思う。
蛇がでてくるんじゃないか、クマに出くわすんじゃないか、毒蜘蛛が刺す、ハチが刺すかもしれない。
切り株やツタでつまずくんじゃないか、地面がぬかるんでいて滑って転ぶんじゃないか。
ありとあらゆる危険性が頭に浮かんでくる。
まして道がわからなくなったりすれば、不安と恐怖は頂点に達する。
全身の感覚を研ぎ澄まし、わずかな危険性も察知しなければならない。
体のわずかな違和感、痛みにも敏感になる。
つまり、不安や恐怖が痛みを敏感に感じさせるトリガーとなる。
感覚神経が敏感になれば、普段、わずかな違和感を感じているだけでも、それを痛みとして脳が感じてしまう。
つまり痛みを感じるダイヤルがボリュームアップの方に回される。
これを感作という。
この感作は、森の中だけで起こるわけではない。
普段の生活の中で、常時不安や恐れを強く感じていれば、感作は起きる。
そして、不安や恐れは様々な感情から生まれてくる。
怒り・憎しみ・悲しみといったネガティブな感情は不安・恐れに行きつく。
しかし、喜び・愛しい・嬉しい・面白いといったポジティブな感情でさえ、これが続いてほしいと思えば、不安・恐れの感情に行きつく。
喜怒哀楽、全ての感情は不安・恐れと結びつく。
では、不安・恐れ以外の感情はどうやった起きるのか?
これは、記憶と思考によって湧き上がる。
過去の成功体験や失敗体験、まわりの反応、未来の予想など、脳内にある材料から湧き上がる。
では数ある記憶や思考の中で、脳は何を基準にして選んでいるのか?
現在、体験していることで、筋肉がどんな反応をしているかによって、脳が選択している。
たとえば今、腰の筋肉に張り感がある。
腰の筋肉が張っているという情報が脳に昇ってくる。
脳は過去の記憶を探し出し、このこっている感じは、過去のどのパターンで生じていたのかを探し出す。
この感じの時は、仕事を抱えすぎてパニックになったときの、あの感じに似ている。
あの時はすごく焦っていた。
結局、間に合わなくて、上司に能力がないと言われた。
その時、自分が不甲斐なくて、情けないと思った。
つまり、腰の筋肉が張ることにより、自分が不甲斐なく、情けないという感情がわきあがる。
この感情が、この先、自分は大丈夫だろうかという不安に結びつく。
感覚神経の感作がはじまり、腰の張り感は痛みにかわり、じっとしても痛みを感じるようになる。
つまり、筋肉の状態が過去の記憶や思考と結びつき、ある感情と結びつく。
その感情は不安・恐れに行きついて痛みの感作を起こす。
この神経回路ができあがれば、腰の張りをスイッチとして、不安・恐れが沸き起こり、腰の強い痛みが発動する。
常に腰の筋肉が張っていれば、常に腰の強い痛みがなくならない。
ここで解決策をとるとすれば、腰をマッサージして腰の筋肉を柔らかくすること。
しかし、これは一時的なもので、またすぐにもどる。
不安、恐れがおきないようにすること。
これは不可能。
人間である以上、いたしかたない。
結論は、腰の張りが少ない状態をキープすること。
そのためには、他の筋肉もしっかりと働いてもらうようにバランスを取ること。
筋肉が働きやすいように骨格を整えること。
これがキープできれば、出来上がった神経回路が崩れてくる。
おおもとが消えてしまうのだから、それ以降のルートは途絶えてしまう。
体の中の不安・恐れのスイッチが一つなくなる。
精神的にも安定しやすくなる。
これが当院の施術のゴールだ。