「あ、右足が短いですね」の呪縛にご注意!
当然なこととして、人間の身体は左右対称ではない。
だいたい右利きの人は右の肩が下がっていて、左の肩があがっている場合が多い。
右の腰が反り気味で左の腰は丸くなりがちである。
もちろん、右利きでも反対の人もいる。
ただ、そういう傾向があるという話だ。
いずれにしても、右手と左手の使い方が違えば、当然右半身と左半身のバランスは偏ってくる。
中にはいつも偏りを気にして、鏡ばかり見ている人もいる。
まして整体院や接骨院で、「こちらの肩が下がっていて、こちらの脚が短いですね」なんて言われて、ずっと気にしている人もいる。
骨格ばかりではなく、内臓だって右と左では違うものが入っている。
左右水平でまっすぐなんてことはあり得ない。
人間の身体は車のハンドルのように遊びがある。
傾きに対する遊びというか許容範囲がある。
その許容範囲内での左右差ならば、痛みなどの症状は出ない。
その許容範囲を超えると身体は警告アラームを発するように痛みを出す。
しかし、その許容範囲は人によって、また年齢、性別によっても違う。
ある程度年齢を重ねても筋肉が柔らかい人は、背中が丸くなっていても腰痛などにならない。
若くても、筋肉が硬い人は、それほど姿勢が悪くなくても痛みが出ることがる。
まさに人によって千差万別だ。
私はそれよりも、左右の筋力差に注目する。
左右の筋力差が少なければ、骨格も左右の歪みが少ない。
たとえ、左右で位置が偏っていても、筋力の左右差が少なければ、痛みは出ない。
それはその人なりの許容範囲内にとどまっているからだ。
カイロプラクティックでは、足の左右差を見て「こちらの脚が短いですね」などと言うが、反対の脚が長すぎるかもしれないではないか。
いや、もともと人間の脚は、よほど遺伝的奇形がなければ、左右とも同じ長さである。
短く見えるのは、その脚の付け根である股関節がついている骨盤の位置がずれているからだ。
脚が長い場合も同じだ。
しかし、脚長差だけでは骨盤の位置がどうずれているかはわからない。
しかし、脚力のテストをすれば、一目瞭然である。
右の脚に力が入りにくければ、右の骨盤がずれているし、左の脚に力が入りにくければ、左の骨盤の位置がずれている。
それに基づいて骨盤矯正をすれば、左右の脚長さはなくなる。
患者さんにうかつに「右足が短いですね」などと言えば、「ああ、私は右足が短いから、いろいろ痛くなるんだ」などとトラウマを与えてしまう。
施術者は充分気をつけなければならない。