「腑におちない」治療じゃ治らない。
問診をしていると、中にはイライラして不機嫌なる患者さんもおられます。
「今まで同じような症状が出たことがありますか?」
「学生時代から今まで、腰痛があったり、ぎっくり腰になったことがありますか?」
「そのとき、どの医療機関を受診して、どういった治療を受けましたか?」
「そのとき、その症状について、お医者さんからくわしく説明を受けましたか?」
「今、腰痛以外で、お医者さんにかかっていますか?
「今、何か、お薬を飲んでおられますか?」
結構、私の質問が続きます。
やがてイライラした患者さんは、
「そんなことどうでもいいから、早くこの痛みを取ってください!」
私は説明します。
「今の症状なるにいたった経過を、できるだけ詳しくしりたいので、お聞きしています」と・・・・。
それから、何が原因でこうなったのか、今、どういう状態で痛みが出ているのか。
これから、どうやって、どんな考え方に基づいて治療していくのか。
できるだけ、詳しく、わかりやすく説明します。
こうなってくると、もはや患者さんのイライラは爆発します。
「それで、治せるんですか?治せないんですか?」
私は、「治ると思っているし、治そうとしているので、こうやって説明しているんです」と答えます。
私たち徒手医療の治療家は、薬も出さないし、手術もしません。
患者さんを外部からの力で治そうと考えていません。
患者さん自身の自然治癒力を引き出して治そうとしているのです。
なので、患者さんの治そうとする意志が大切です。
私たちは、患者さんが自然治癒力を発揮して、自らの力で治っていくのをサポートするだけです。
患者さんが「自分の身体を預けるから、治してみろ!」という思いなら、残念ながら治りません。
「おまえにこの痛み、取れるもんならとってみろ!」というのは、ご自分の治そうという意志を放棄しているので、自然治癒力が働かないんです。
腰が痛くて、何年も症状が取れないでいるとき、いったいご自分の身体に何が起こっているのか?
それがわからなければ、その痛みと戦う術はありません。
私の治療の意味も、日常生活における指導も、意味がわからなければ、続けていこうという気にもなりません。
どうでもいい、今、すぐこの痛みがとれれば、めんどうくさいことはわからなくていい。
しかし、痛みには原因があります。
その原因を取り除かない限り、痛みは去っていきません。
それには、今までの姿勢、今までの動き方を変えていかなければなりません。
人間は、日常生活に、何かいつもと違うことを組み込むことに抵抗があり、まして、わけもわからずに「これをやってください」と言われて素直に受け入れて続けることはできません。
続けることができなければ、痛みの原因を取り除くことはできず、当然、痛みもなくなりません。
その場で痛みをやわらげることも、軽い痛みなら取り除くことも不可能ではありません。
しかし、また、「原因不明」の痛みは戻ってきます。
原因を取り除き、痛みが再び戻ってくるのを防ぐには、今までの姿勢、動きを変えることです。
しかし、それはすぐにはできません。
繰り返し試み、繰り返し意識して身体にしみこませ、無意識にできるようにしなければ・・・・。
それには、継続が必要です。
私たちは、ロボットではないので、継続には理解と納得が必要なのです。
「原因不明の症状に対し、わけのわからない治療と指導」
これでは、だれも続けようとは思わない。
理解と納得、しかも、頭と身体の両方で・・・・。
これを「腑に落ちる」と言います。
腑に落ちて初めて、人は続けることができる。
いやがられても、患者さんの「腑に落ちる」ように、しつこく聞き、しつこく説明したいと思っています。